ゴリラ農園

霊長類としての尊厳を守るためのブログ

2018年のトレンドは白米弁当男子

 昼飯に弁当屋のインド人(ターバンを巻いているからという理由でそう思っている)から弁当を買い続けはや数か月。これ、毎日弁当代で500円払ってるけど高いなという事に気が付く。

 

インド人に毎日貢ぎ続けた結果、弁当を買わなかった日も買った感じの態度で「イツモ アリガトネー!」と接してこられてしまい罪悪感を感じたことがある。

それ以来、弁当を売り終えて姿を消すまでは弁当屋の前は通らないようにしている。

何ならおつまみ程度の雑談を交わすことすらあるし、ペルソナであればコミュレベルが6くらいのポジションになった今、俺は昼飯の自炊をはじめた。

これはインド人に対する反逆に他ならない。

 

今年に入ってから1度もコンセプトカフェに行っていないのにも関わらず俺の財布は息絶えそうになっていた。AEDも効果なし、給料日までにできる延命措置は食費を削ることだけだった。鬼のように低い手取りをよそにブログを書いている場合ではなく転職サイトを見るべきなのだが、転職サイトを見るだけでも精神力が削れていくため致し方なし。

 

 しかし、そもそも弁当を作ったことがないので、弁当のノウハウがまるで存在しておらず、白米さえ食べれば餓えに苦しむことはないだろうという気持ちだけが俺を突き動かしていた。

炊きたてのご飯(2合)をタッパーに詰め込み、申し訳程度に昆布を置き、弁当を完成させた。

だいたい日の丸弁当だな。

”やりきった感”に包まれながら昼食を心待ちにした。自分で手間をかけて作ったものは美味いに違いない。白米と昆布の乗った貧相な弁当に対してハードルの高さが異常であった。

 

 昼になり、コソコソとタッパーをレンジに入れに行く。ほぼ白米オンリーの気狂い弁当である自負はあった。

 思い返せば高校生の時、原則バイト禁止という校則に完全に屈していため、月のお小遣いと昼飯代だけで遊びに使う費用をやりくりしていた。

しかし、部活を辞めさせられる原因ともなったガンダムバーサスシリーズがゲーセンで稼働真っ盛りだった時期は100円をジャブジャブ使っていたため小遣いは即座に使い切り、ログインボーナス代わりに貰える昼飯代の昼飯にあてる金額をいかに減らすかということに注力し、当時もこうして学食にあった白米単品に食堂に置いてあった塩をかけて食べていた。

白米がメニューとして存在しているくせに白米を頼むと学食のおばちゃんが怪訝な顔をするのを覚えている。

食堂でカレーばっかり食ってるイケメンをカレー王子と呼んでいた脳みそサフランライスの女子、元気してるかな。

 

学食のおばちゃんの怪訝な顔を思い出しつつレンチンを終え自席に戻ろうとすると、買ってきた弁当を食っていた人にホカホカの白米がパンパンに詰まったタッパーを凝視されてしまった。何だこの白米ピエロはという顔をしていた。

もしかして白米をご存じない?その弁当にも入ってるけど…その白米と俺の白米、交換してやってもいいけど、どうする?

 

 弁当を食いはじめて間もなく、昆布が消滅した。白米を彩るアクセントとして鎮座していた彼はもういない。タッパーの中には白米。白米on白米。シベリアのように白いタッパーになっていたが、デキる男なのでふりかけを持ってきていた。のり塩ポテチ味のふりかけとおかかのふりかけ。攻守兼ね備えた隙がない立ち回りで白米を翻弄していく。

 

2合の米を食べ進めていくと徐々に疲労を感じるようになる。オカズ0に対して明らかに米が多い。何がライザップだよ馬鹿野郎。糖質制限中の人間の前でこそ一番美味く食えるんじゃないかこの弁当は。アツアツの焼き肉、ホカホカのご飯、そして糖質制限中の人間が揃えば最高のご飯になると思わないか。そうこうしているうちにつらい戦いは終わった。

 

 白米弁当について「平成の弁当はもっとカラフル」という辛辣な意見を貰う。心が折れそうだ。

一瞬、のりたまなら弁当をカラフルにするだろうという安直な発想に至ったが、ふりかけは所詮ギリースーツを着た白米に過ぎない。本質が白米であることには変わりないのだ。そもそも節約するために白米オンリーイベントを開催しているんだった、そうだった。

アイディアを得たく、ズボラ飯を調べても、言うほどズボラではなく自分を過小評価しすぎているものばかりで、本当にズボラであれば調理という過程を一切行わないはずだ。ズボラな奴は包丁もフライパンも握りたくないんだよ。ズボラエアプか?真のズボラ飯を知りたい。

 

 

俺が焼肉屋の換気扇の下で臭い嗅ぎながら白米食べていたら遠慮なく殺してくれ。

いまから間に合うバレンタインデー完全攻略法

そんなものはないよ。

 

 2018年が湿気た空気のまま2月を迎えて1年ぶりのバレンタインデーですね!いかがお過ごしでしょうか。チョコレートを貰う予定があるという人はいずれその血を持って償ってもらう…

 

おじさんしかいない空間で働いている身からすると、オフィスで配給される女性社員からの「しきたりとして嫌だけど自腹切って配られたチョコ」ですら最高級ですからね、他人の手から譲渡されたチョコレートはたとえブラックサンダーであってもGODIVAみたいなもんですからね。何であっても泣きながら食え!!!!!

妹からなあなあで貰うやつ、手短に言って自害してほしい。

”チョコレートを貰う努力”をしていないなと思い自戒したのだけれども、努力の矛先がないのもまた事実。諸行無常

 

 

 ふてくされているうちにバレンタイン2日前になり、世間が本気のバレンタインムードをかもし出してくる。シーズンが終わって安くなった生チョコを流し込むように食ってやろうと考えていたが、ボディーソープが切れて買いに行った時にフレグランスボディーソープが目に付き閃く。

 

フレグランスボディーソープでイケメンと同じ匂いを身に纏い、生きとし生ける女性の嗅覚からごまかせば脳がイケメンだと錯覚しチョコレートを入手することができるのでは?

俺はだいたいどこにでも売っているからという理由でずっとダヴを使っていたため、やさしくうるおいのある肌なのだけれども、とうとう巣立つ時が来たのだ。

 

ボディーソープコーナーにあるフレグランスボディーソープの口コミをネットで検索し、イケメンと同じ匂いがするみたいな感じの口コミのボディーソープを買う。

あとはこれを身体に塗りたくり、イケメンの匂いでコーティングするだけで存在は昇華する。俺は今日出会ったばかりのボディーソープに全幅の信頼を寄せていた。

 

 ウキウキしながらボディーソープを風呂場に持ち込みフタを開けるとフレグランスな…そう、フレグランスな感じの匂いが漂ってきた。ダウニーのフタを開けて嗅いだ時とは大違いの。フレグランスな…

身体をボディーソープまみれにしている段階でちょっとクセのある匂いだなとは思った。しかし、俺はネットの口コミを信じている。イケメンの匂いを嗅いだことがないだけで、イケメンはこういう匂いがするのだろうという催眠状態に陥っていた。

 

 風呂から出ると、俺の体臭は完全にアメリカから来た外国人留学生になっていた。

しかもタフガイ寄りの。話が違うじゃないか。

イメージと違い、さわやかで透き通った匂いではない。さわやかさはあるものの鼻の中で停留する匂いといった感じで、常にこれを嗅いでいるとちょっと、キツい。

この匂いを好む女はアメフトのクォーターバックの男と付き合ってそうなチアリーディング部のリーダー格の女だけだ。

ここで気が付いた。そもそもこれを嗅ぐ人間がいない。

盲点だった。

 

明日ダヴを買ってこようと思う。

年末が過ぎると抜け殻になる

 年末にクリスマスに対する憎悪と嫉妬が入り混じり感情が生後間もない赤ちゃんと同等になり抜け殻となった。抜け殻のまま冬コミの手伝いをし、地元へと戻り、嫌がる猫を抱きかかえながら年を越した。

 

 時を遡りクリスマス。彼女という概念が存在しないかのようにオタクとしっとりとボードゲームをしに秋葉原へと向かう。クリスマスだというのにボードゲームができる店はほぼ満員でオタクがすし詰めになっており、そこには小さなコロニーができていた。クリスマスパーティが夜中に開催されるらしく、盛況そのものだった。

俺はサンタクロースの末裔なので、オタクたちにクリスマスプレゼントとして日高屋のクーポンと2つ溜まった銀だこのスタンプカードとシルバニアファミリーの白猫の赤ちゃんのフィギュアをお年玉袋に入れて配布して年1の勤務を終えた。

 

ボードゲームを終え、夕飯にありつこうとしている道中にコンセプトカフェのキャッチが大量に存在していた。

クリスマスに何をやっているんだお前らは。常連のおじさんがクリスマスの予定を聞いてきてシフト入ってないと後々面倒なことになるから入ってるのか、そういう時は友達とディズニーって言っておけばおじさんも深追いしてこないから大丈夫だよ。そもそもおじさんに生殺与奪の権を握られてはいけない。

 

焼肉を食うか否かで揉めた後に小洒落たレストランバーのような、形容しがたい店でちょっとでもクリスマス気分を味わおうとターキーを食べた。鶏肉の味が口の中に広がって美味しかった。

 

 ボードゲームをする会として解散した後、俺は生理現象のようにコンセプトカフェへと行きたくなっていた。本屋に入ったらウンコをしたくなるのと同じように、コンセプトカフェのキャッチを見るとコンセプトカフェに行きたくなるのだ。これは自然の摂理とも言える。

 

クリスマスは何かしらのイベントをやっているし、なにより家に帰って孤独になりたくなかった。

一緒にボードゲームをやっていたオタク1匹を「1時間だけ!1時間だけ!ケーキもある!ケーキもあるから!クリスマスだから!」という甘言で惑わし引き連れることに成功。

天パのオタクがよく行く例のコンセプトカフェへと向かう。ちなみにケーキは店に置いてない。

 

 店に着くと都合よく席が空いていたため、すんなりと座ることができた。オカマバーや女装喫茶では小うるさいほど饒舌になっていたオタクがメニューを熟読する等、挙動不審になっている。

どういう情緒なんだよ。

 

しばらくすると、しゃるるという顔見知りのキャストがやってきて「死んだオタクだ!!」と言われ隣に座っていた赤の他人が「死んだのか…」とつぶやいていた。そうだよ、霊障に怯えろ。

 

メニューにはイベントだからか、普段は存在しないチェキが設けられていて絶対にこのホロ酔いオタクにツーショットチェキを撮らせるぞという気持ちになる。

「200円出すからチェキ撮ってきてよ」というともっと出せと言われるが、すでに乗り気かよと思いながらも500円に釣り上げると交渉が成立した。あまりにもチョロい。会社の飲み会で半裸になる男はケツが軽すぎる。

その後、何故か「チェキ代全額出すからヌエも撮って」という流れになり、半額払って全額貰うという世にも奇妙なトレードが行われる。クリスマスは人を狂わす。

 

チェキを誰と撮るかという話になり、俺はこの夕飯をグラノーラに置き換えて減量に成功したストイックなオタクを柔軟にいなせるのはしゃるるしかいないと思いしゃるるを推薦した。

 

このオタクはナチュラルボーンホモガキなので、野獣先輩のポーズでチェキの撮影に挑み、キャストから野獣先輩のポーズであることを看破されると何故か満面の笑みをこぼしている。感情のからくりを理解することができない。

 

邪悪な汚物としゃるるが写し出されたかと思われたチェキは、呪われた写真のように真っ暗でまともに写っていなかったので、再度撮り直すことになったが、野獣先輩へのこだわりを一切見せずにポーズを変えて撮っている。グリフィンドール1点減点。

 

 そうしているうちに1時間が経過したので退店した。

家に帰り、風呂に贅沢にもバブを2個入れた。メリークリスマス…

 

比較的悲しいクリスマスはこうして幕を閉じた。次の日は月曜だし、25日に学校とか会社を休んだハナタレ野郎はまさかいないと思うけど……

 

 

 

後日のオタク

俺はまた1人コンカフェオタクを作り上げてしまったのかもしれない。

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いつまでクリスマスの話してんだよってなったからおわり

クリスマスまでもうすぐな件

 気が付くと2017年が終わろうとしている。いかがお過ごしでしょうか。

ご存知の通り私は今年もフリーランスの童貞をしています。

年を越す前にクリスマスとかいう賑やかなイベントがありますが、友達が2人もクリスマスを前に別れているので例年に比べると心が穏やかである。

 

 クリスマスに焦って奇行に走らないためにレンタル彼女のサイトを見ては1時間5000円~などの鬼のような雇用形態を目の当たりにし冷静さを取り戻している。

そもそもカップルってクリスマスに何をするんだよ、夜の営みの前哨戦としてイルミネーション見て、ラブホテルに長蛇の列を作って、イルミネーションの気持ち考えたことあるのかよ。

とはいえ、ラブホテルにできる長蛇の列も俺の中ではグリム童話レベルの創作話だと思ってる節がある。カップルが椀子そばみたいなプレイスタイルで1発キメてから出ていくってそんな話あります?淫らすぎるだろ、本当に地球圏で起きてる話かよ。俺が偏差値10くらいの高校に通うYouTuberだったらラブホテルにできる列撮影してアップロードしてたな。命拾いしたな。

 

   思い返せば2年前のクリスマスは調布にあった(俺に惜しまれつつ閉店した)チャイナ居酒屋でオタクと飲んでたらオタクがベロベロに酔ってベタベタしてきたから終電で返品処理して、去年のクリスマスはその泥酔するとメス化するオタクと強制労働施設送りにされたオタクで肉の万世で…ほんの少し高い肉を食った…そして今年はそれらのオタクたちとボードゲームをする予定…

クリスマスの風情がまるで無い、なんで3年連続で同じオタクと過ごさなきゃいけないんだ。今年のクリスマスはずっとルチャ・リブレのマスク付けて俺の脳を誤魔化してくれ。頼む、200円払うから。

 

 ところで、街コンってご存知ですか?私は1度だけ行ったことがありまして(記憶喪失)5000円払って冷えた水を飲んだだけなんですけど。あれ、誰とも連絡とらなかったら"虚無"なんだって気付いちゃったんですよね。たまげたなあ。

でも30代女性となあなあでLINEするの五臓六腑に負担じゃないですか?強靭な精神力を持っていたら路上に放置された犬の糞の写真送りつけて相手からブロックされて終わりにするんですけど、俺の精神力じゃそうもいかないので。

クリスマスに街コン行きたくないですか?人生において二人一組を組めなかった者たちが深い傷を舐め合いに集う邪悪な儀式だと思っているんですけど。もはや樹液舐めにきてるカブトムシたちみたいな、そんな印象があるんですけど。

いや、立場が完全に同じなので見下してるわけじゃないんですけど、クリスマスシーズンに街コンに来る人間の覚悟を知りたい。クリスマスだから「まぁ年明けまではこいつでいいか」という妥協と利害の一致によって誕生したカップルが生まれるのだろうか。ワクワクしてきた、地球に生まれてよかった。

しかし、調べてみると募集枠がかなり埋まってて参加は厳しそうだ。となると明日は道端のカップルを殴って回る以外にやることがない。

拳が震えてきた。

哺乳瓶で酒を飲むオタク

 哺乳瓶で酒を飲む人間を見たことがあるだろうか?生命倫理に反するおぞましい生き物…

おそらく、真っ当で高潔な人生を送ってきたのであれば見る事はないだろう。

俺は、見た。生後287ヵ月の大きな赤ちゃんを。

 

 以前、原宿に行った天然パーマの人物を覚えているだろうか。

そう、でんぱ組のオタクである。

 

nu26e.hatenablog.com

 

でんぱ組のオタクはあれから紆余曲折あり立派なコンセプトカフェオタクへと仕上がっていた。

元がアイドルオタクという事もあり、土台はある程度できあがっていて、その豊穣な大地に種を蒔く(推しを見つける)だけの状態だったのだろう。

無事に推しを見つけてコンセプトカフェオタクの花を開花させた彼は、学生とは思えぬ尋常ならざるスピードでのめり込んでいった。

 

 そしてこの間、推しのイベントがあった。天パオタクは俺の推しの卒業イベントに来てくれたので義理がある。義によってイベントに参加致す。

 

21時~5時までのイベントに対して「20時ごろから行くんで」という天パの声を聞き流し、ハイローオタクどもとハイローカフェに行き、暇つぶしにアキバに行き、最終的には一人で漫画喫茶で時間をつぶしていた。

俺は推しが卒業してからは退役軍人となり全くコンセプトカフェに行っていなかったので、日付が変わってから行く予定で漫画喫茶に滞在していたのだが、闇金ウシジマくんを読んでいると、ブチ上がり天パオタクから俺の元推しが店員としているというLINEが来て困惑する。気まずい。完全に死別したものだと思っていた。お盆じゃん…

 

 LINEで「早く来い」「早く来い」と地獄からの手招きがうるさいので、予定よりも若干早く漫画喫茶を出ようとすると天パから電話がかかってくる。電話の内容は「早く来い」といった内容だった。こいつ酔ってブレーキ壊れてんじゃん!目の前でビアンキ燃やしたろか。

 

 店につくと待ちが出るほど混んでいて、俺は酔っ払いの天パの後ろに立つカタチで待たずに入れた。天パの目の前には大量のチェキと写真がある。これはチェキくじを引いたんだなと察する。全種類がオンリーワンのチェキくじなので、どれが出てもSSRカードみたいな、そんな感じなのだろう。俺の推しの時にチェキくじがあったらいま臓器1個ないかもしれないな。と思っていると天パが「ヌエさぁ~~ん!チェキ欲しいな~~!」とか言い出してんの、おねだりのスピードがはえぇよ。アクセル全開じゃん。誰かこいつの燃料タンク撃ってくれよ。

「俺、誕生日12月4日なんすよ!」という最強の盾によるゴリ押しに負け、一枚買うと「もう一枚!」ってどうなってんの?シナプスが焦げ付く早さの反射速度じゃん。

躊躇していると「雨宮伊織のチェキ買った!雨宮伊織のチェキ買った!」という最強の矛まで出してくる。確かに俺は雨宮伊織のチェキを買ってもらった。推しが卒業してしばらくした後、メルカリでの人身売買(アイドルチェキの見漁り)をしていた時に見つけたチェキだ。このまま狂気にあてられた男が雨宮伊織のチェキを買ったことについて言及してくるとそこらへんを徘徊している推しにバレてしまう。チェキくじを購入。

イイ感じのチェキが出たようでご満悦になり、興奮が収まる。赤ちゃんじゃねえか。キャッキャッじゃないんだよ。チェキを眺め、バインダーにしまうと「推しに殺されたくないですか?」という狂気トークを持ちかけられる。俺は朝まで正気でいられるだろうか。

  しばらくして、俺も席に座ることができて落ち着いていると隣の客、つまり天パのオタクの前に哺乳瓶が置いてあることに気付く。ハハア、まいった。俺もカバンの中におしゃぶりが入っている。

 

その哺乳瓶が破天荒な俺の推しに見つかり、なみなみ酒を注がれていた。社内でビールサーバーのあだ名を欲しいままにする女の手際だった。

ヂュ…ヂュ…というイヤな音が隣の席から聞こえてくる。こいつは今、確実に哺乳瓶の乳首を吸っている。そう確信して隣を見ると、こちらを見ていた。こええよ、こっち見んなよ。目がシンゴジラのポスターみたいになってんだよ。

f:id:nu26e:20171127231445j:plainこの目で見るなよ。

 

 その後、俺も慣れない焼酎をガブガブ飲み顔をパンパンにさせながら楽しんでいた。天パのオタクは脊髄反射で残り少なくなったチェキくじを買い占め、バインダーをパンパンにしていた。散財する天パに「食べられる野草調べとくよ」って言ったけど、まあ大抵の野草って食べられると思うよ。

 閉店時間になり、オタクが各々お見送りをされながら帰りゆくなか「(推しにお見送りしてもらうから)早く帰れよ!ヌエ!」と野次を飛ばしてくる天パの圧を受けながら俺は推しセカンド死別をして先に退店した。

外の自販機にあった何故かつめた~いで売っている冷え冷えのコーンポタージュを天パに買っておき、なぜか真顔でエレベーターから出てきた天パに投げつけた。なんで真顔なんだよせめてヘラヘラしろよ。なんで狂気を店の中に置いてきてんだよ。

はじめての街コン

 週の初めから陰鬱な気分が漂っていた。理由は単純明快で、週末にいよいよ街コンに行くからだ。初対面の人間といきなり1対1で何を話せばいいのかという、基礎の段階で詰まっており、脳が焼け焦げるほど悩み続けた結果、答えは”無”。策がないまま、死刑執行を待つのみとなる。

 

 金曜日に、会社で行われる「社員を鼓舞する」という名目で、上層部の方々に御託を並べられた後に立食パーティーをするという催しがあった。モチベーションを上げたければ黙って給料を上げるという猿でもわかる結論を避け、延々と”労働力”たちにありがたいお言葉を投げかけてくる。上層部の「ぼくたちのしょうらいのゆめ」が終わるとようやく立食パーティーが始まる。立食パーティーでは偉いジジイどもとクソつまらない会話をしたくないがために、自然と同期達が同じ卓に集まり、息をひそめていた。

 同期の卓では、メスの同期が「なんか浮いた話とかないの?」と男性陣に”陰の者”しかいないのに無闇に言葉のハンマーを振りかざすので、街コンに行くという話を俺の話題の手札から切る。俺はなんでもいいからアドバイスが欲しかったのだ。が、ダメ。屁ほども参考にならない。なぜなら女性陣もまた”陰の者”だったからだ。

それどころかアドバイスを貰おうと思った結果、俺がマジでヤバい奴というレッテルを貼られるハメになる。

「街コンで趣味の話は何を話すの?」と聞かれたので「映画鑑賞とかじゃね?」と言うと、ありきたりでつまらないというような反応をされたので、最近は赤の他人が身内用に作ったスタンプを買うのにハマっていると言ってしまった。失言だった。これは完全に自分の中のサイコパスの部分で、あまり他人に知られていい話ではない。

同期どもは、まるでピンと来ていないため、滅多に使わない同期用のグループLINEにそのスタンプを貼る。完全にドン引き。人の所業ではないというような顔で俺の方を見る。うるせえ、俺もこれがポピュラーな遊びではないということはわかってんだ。特にドン引きされたのは赤ちゃんのスタンプ。確かに、こうしてわざわざ文字に起こして自分の行いを再確認すると、相当気持ち悪いなと思う。

他人の赤ちゃんのスタンプ使って何が楽しいの?と聞かれて、もう我が子だと思ってるというと余計にヤバい奴だと思われてしまったので、「友達の中でこういう赤の他人のスタンプを買う遊びが流行っている」というホラを吹いて、なんとか人権を失わずに済んだ。

一応、赤の他人スタンプ買ってる友達いるし嘘ではないよな、な?俺が5個も買ってるだけで1個買ったら何個買っても同じだよな。罪は消えないんだよ。

結局、友達に赤の他人の身内用スタンプを集めている奴がいるという話題を街コンで使えばウケるのでは?という結論に至った。連絡先を交換した後、赤の他人の身内用スタンプを送ることで恐怖は完成する。

 

 何の成果も得られないまま当日を迎える。午前に宅配便による目覚ましをかけていたため、最後の準備時間はたっぷりとある。今更ではあるが、イベント詳細ページを開き、ドレスコードではないことを確認。だが「清潔感のある服装」という記載があり、清潔感の概念を己に問う。完全にパーカーに上着を着て行こうと思っていた。俺の中でパーカーはフォーマルな恰好だと思っていたから。

清潔感ってなんだよ。パーカーじゃダメなのか?ダメな気がしてきたな…という脳内会議を経て、パーカーを泣く泣くやめることにした。パーカーはフードのボリュームで小顔効果があるらしい。肩幅もごまかせるし天空のよろいか何かだと思っているフシがある。

朝食も昼食も採らず、食べかけのポップコーンのみを口にし、重い足取りで会場の最寄り駅まで向かう。開催時間は夜なので、若干一日も終わりかけているが、本番はこれからというのがとにかく苦しかった。

 一緒に参加する友達2人と合流して、開催場所へと向かう。この戦いは孤独ではない。それが唯一の救いであった。ヤバい奴がいたらヤバい奴が居たとシェアできる人間がいる事がどれだけ心強いかことか。後世に伝えたい。

友達は男1人女1人の好守兼ね備えた構成。ドラクエ2でいうとローレシアの王子サマルトリアの王子ムーンブルクの王女のパーティ。ドラクエ2やったことないけど。

 

 

 腰が引けながらも会場に向かうと、半個室のような会場だった。広い会場で男女ごとに横一列に並べられて回転寿司のように回ってひとりひとりと会話していくものだと思っていたが、大きな仕切りで区切られていた。出鼻をくじかれつつ受付を済ませると、自分の番号が書いてある席に行けと言われ向かう。

2席あるうちのの片方にはすでに女性が座っていた。殺すしかねえ。これは命を賭けた椅子取りゲームだ。肝を冷やしながら空いている席に座る。受付からここまで、心臓は常にバクバクと鳴っている。俺の寿命がすり減っていくのを感じる。何を得て、何を失うのか。

全員が揃うまでプロフィールカードを記入する時間となっていて、とにかくこれが重要なのでクソ真面目にプロフィールカードを記入する。

まず最初に相手とプロフィールカードを交換してから会話するという流れなので、逆にこれをちゃんと書いていれば話題には困らないと高を括っていた。

しかし、好きな芸能人の欄が埋められない。これはどういう”好き”なんだ…?好きな芸人を書いてお笑いの話題に持っていく欄なのか?三四郎の小宮を頭にチラつかせながら無駄な思考を巡らせてしまい、空白のまま記入時間が終了する。

 

 いよいよ、赤の他人と会話をする地獄が幕開けようとしていたが、何故か隣にいた女性が別の席へと移動してしまった。俺の覇気にあてられたのだろうか。

結局、俺の隣に人が居ない状態で会話タイムがスタートする。これが街コンの洗礼か。周りに響く会話をよそに俺は虚空を見つめていた。一度目の会話タイムが終わり、男性陣が席を一つずつ移動していく。ようやく、か。と思い次の席を覗き込むと、また誰もいなかった。俺の次の席にいた男もまた、虚空を見つめていたのだ。虚無のベルトコンベアに乗っているのか、俺は。

 次の席移動の時間が来ようとしている時に、隣に女性が来た。おせぇ~よ!もう運命の輪は廻り始めてんだよ!!!!「すみません…」と会釈をされ、俺は複雑な気持ちで席を移動した。後で友達に聞いた話によると、その人は調布に住んでいる人らしい。今度見かけたら四足歩行で追いかけまわすからな。

 

 次の席にはようやく人の姿があった。第一村人発見。と思っていると最初に隣に座っていた人だった。奇遇ですね。「最初に座ってた人ですよね?すみませんなんか席移動させられちゃって…」という謝罪から入られたが、ここに来るまでの間、虚空を見つめて精神統一していたので完全にどうでもよかった。謝られる筋合いもないし謝る筋合いもないのだ。フェアにいこう。

懐で温めておいたプロフィールカードを交換し、ようやくまともな会話がはじまる。相手のプロフィールを見ると30代の方だった。この街コンは女性が20~35くらいまで、男は25~35くらいまででカテゴリーとしては婚活も含まれていた。プロフィールカードには年収のチェックボックスもあり、好きな芸能人以外埋めていた俺は無論、一番収入が低い選択肢にチェックを入れている。お互いに利害の不一致を感じとり、完全に会話が当たり障りのないものと化する。相手の飼っている犬の話を掘り下げていたところで、席移動の時間になる。実際に会話してみてわかったが、会話のために設けられている時間が短い。これで何がわかるのだろうか。犬の事だけだろう。

 

 俺はいったい何をしているのだろうという気持ちに包まれながら次の席へと向かうとダラりと座っている女性が気だるそうにプロフィールカードを書いていた。おせぇ~よ!もう運命の輪は廻り始めてんだよ!!!!しかもなんかできあがってないか?何アルコール入れてきてんだよ、シラフで挑まんかい!この方も30代で、基本的になんか、何言ってるかわからなくて恐怖すら覚える。

今年一番内容の薄い会話を終えて次の席に移動する。ようやくまともなファーストコンタクトを取ることに成功し、プロフィールカードを交換すると、趣味が映画で好きな映画も被っていた。なかなかやるじゃねえか、と思っているとこの方も30代で、ここで俺は「もしかして婚活がメインなのでは?」という思いに駆られはじめる。決して30代の女性を貶めているわけではない。まず彼女もできたことがないし童貞だし結婚なんて眼中にないし財力もないということ。持たざる者なのだ俺は。オタク特有の映画の話をベラベラと続けてマウントを取り、席を移動した。

 

 

 次の席には誰もいなかった。ここはセーフティゾーンだったのかと思うほど心が安らいだ。マジで婚活じゃねえのか?と思い頭を抱えるように自分のプロフィールカードに目を落とすと、空白が目についた。そう、好きな芸能人の欄だ。今まで会話してきた人はここを埋めていて、各々好きな男性の芸能人を書いていた。ダンディな俳優とかイケメン俳優を書いていたと思う。もはやヤケクソになっており、せっかくだから俺も埋めようと、好きな女性芸能人を思い浮かべる。いない。脳裏には有村架純がチラつくが、最近はそんなに好きではない。

そうだ…環奈!環奈、好きだ!後先考えずに「橋本環奈」と筆を走らせる。もう後戻りはできない。ハードルをこれ以上ないほど爆上げして次のステージへと移る。

 

 

 席を覗くと、もはや格好が若い。今までの人たちは大人びた女性といった感じだったが、明らかに女子大生のソレだった。ここにきて、いよいよ本来望んでいた街コンがはじまると思うと再び心臓がバクバクと鳴りはじめる。死期が近い。

乙女のようにドキドキし、名乗りながらプロフィールカードを交換すると、23歳。若い。抜群に若く感じる。顔も可愛い。なんなら、もはや好きだ。

しかし、事態は思わぬ方向へと向かう。プロフィールカードに目を通した後に一言、「橋本環奈って、そんな顔の女はここにはいないよ」と。

~~~~~~ッ!!

いきなり好きな芸能人に橋本環奈と書いたことが完全に裏目に出ているではないか。どういうことだ環奈。でも当の本人もジャニーズのメンバーを書いていたので正直これはクロスカウンターだと思う。お前それ人の事言えないからなオイ、聞いてんのか。

その後はジャニーズの話をして時間終了。投了です。

 

 

 しばらくの間、無人地帯が続き、虚無と見つめあう。俺は5000円払って何をしているのだろうか。次の相手も再び30代の女性で明らかにこちらに興味がなかった。好きな芸能人に橋本環奈と書いていることのみをイジられ、大きく出たねぇ~と言われる。お前も好きな芸能人書かんかい!「広瀬すずならセーフだった」という謎理論を展開しはじめたあたりで席の移動となる。いよいよ精神も摩耗してきている。早くご飯が食べたい…水しかでない街コンで俺は飢餓状態に陥っていた。

久しぶりに20代の女性がいたが、料理の話をして終了。もしかして俺には男女の会話ができないのでは。俺は友達を作りにきているのか、問診をしているのか。

 

 

 1対1で全員と会話するので、当然友達の席にも行くことになるのだが、鬼のようにモテていた。机の上には連絡先を記入できるカードがあり、LINEIDやメールアドレスを書いて渡せるシステムがある。俺はLINEIDがツイッターIDと似ているので絶対に使いたくなかったので、書くことはなかった。何しに行ったんだ俺は。

その、連絡先カードが机の上に重なっている。常日頃から「私はモテる」とか言っていたが、事実を目の当たりにすると面白かった。モテて仕方がないのか、精神をすり減らしている俺とは大違いで、ツヤツヤになりながら満面の笑みで席に座っている。ほぼ全員から連絡先カードをもらっているという自慢を喰らったあたりで次の席に移動する。

 

 

 次の席が最後で、なんだか疲れたように女性が座っていた。この方も30代で最近本気で婚活しはじめたと言っていた。お互いに疲れていたのか、終始雑談をして過ごす。会話時間が終わるとメッセージカードと記入する時間になる。

メッセージカードとは、気になった相手に対して最後のアプローチを仕掛けることができるシステムで、連絡先を一方的に投げつけたりすることができる最強のカード。1人4枚まで書ける。

俺は23歳のジャニオタにメッセージカードを送るべきか否か、悩んだ挙句に送らない選択肢を選んだ。会話弾んでないしな。そもそも。

隣の人も誰にもメッセージカードを送っていないようで、誰にも送らないんですねという話からポツポツと雑談をしていた。街コンでカップル成立してもまるでその後に発展しないという愚痴を言っており、街コンの闇が垣間見える。

 

 メッセージカードが3枚も届いた。誰だ誰だ?と思うと映画の趣味が合った人と当たり障りのない雑談をかました人からで、残りの1枚がどうしても思い出せない。この番号は誰だ…?という思考を巡らせていると隣の人が「マジで思い出せないんですか?!」と記憶力を心配してくる。うるせえ!こっちは脳が焼け焦げてんだ!労わらんかい!

結局、友達がフザけて送っていたことが判明し「またお話ししたいです♡」などというメッセージだけで連絡先が書いていない怪文書の謎が解けた。よく話してるだろ。

 メッセージカードの次は告白カードとかいう、何番の人が良かったというのを上位5人まで書くカードがあり、そこがこう、うまくマッチするとカップル成立という流れになるのだが、当然書いていない。ジャニオタからメッセージカードが来なかったから。

告白カードの集計を待つ間、隣で雑談をかましていた女性から連絡先カードにLINEIDを書いて「よかったら送ってください」とカードをくれた。計3人(全員30代)から連絡先を貰ったことになる。結論から述べると消去法でモテる。相手の妥協先になるかどうかという点でメッセージカードを貰うことができる。また一つ賢くなってしまった。

総じて振り返ると、ひとりひとりの会話時間が本当に短いのでいいなと思った瞬間に連絡先カードを書く勇気が必要。

 

 告白カードの集計が終わると2組のカップルが誕生していた、1組は鬼のようにモテていた友達だった。何してんの。この後メシ食いに行くって言ったじゃん!

外に出ると参加者どもが外でたむろしていた。散れ散れ、終わったんだよ。未練は捨てろ、あばよジャニオタ。しばらくすると友達から「うまく合流を希望」とLINEが来ていた。カップル成立したので、男側からご飯に誘われていたらしい。俺もカップル成立した途端に彼氏面してぇ~~~ッ!!

 男友達もメッセージカードを貰っていて、みんな連絡先を一方的に貰っていることになりハッピーエンド。男友達はちょっと街コンがクセになりそうで怖い。

3人とも連絡先を貰っておいて誰も連絡をとっていない。

カップル成立した友達ですら連絡をとっていない。男サイドが不憫すぎてならない。

クリスマス前にまた行きたいという不穏な話をして解散した。 

 

 

その日ずっと、俺のカバンの中にはおしゃぶりが入っていたということは誰も知らない…

川崎治安悪い説

川崎にあるウェアハウスに行った。

 

登場人物

えんさん:訳あって無職になりそう。大阪から薄い本を売りさばくイベントのため密入国してきた。全身黒い服を着ているため、暗いところに行くと存在が希薄になる。

上田:訳あって無職だった。人類を憎み三代目 J Soul Brothersは憎まない三浦市が生んだ修羅。着物を着ている。

俺:訳はないが無職になりたい。

 

 もう1人”訳アリ無職”のオタクもメンバーに含まれていると思っていたのだが、日本なのかも定かではないような辺境の土地で住み込みバイトをしているため不在だった。

訳アリ無職のオタクは六本木のクラブで夜な夜な遊んでいるチャラついた妹がいる。そのうち妹には「キミの家族構成知ってるんだけどお茶しない?」という切り込みでナンパしようと思ってる(しない)(できない)(街コンは21日)(死)

 

 前述の通り、集合時間に対して15分は遅刻してしまう重い病に罹っているため、何の躊躇いもなく集合に遅れる。上田から改札出たところで着物でいるからっていうアバウトだけどわかりやすい連絡を受け改札を出ると、着物の奴が2人もいる。話と違う。しかも、その横にはコスプレをした奴が2人いる。世界観メチャクチャかよ、胃もたれするわ。いきなり川崎の熱い洗礼を受けるハメになるとは思いもよらなかった。

 

 ウェアハウスに向かう道中、マクドナルド(東京では"マック"と言います)を見かけるたびにヘラヘラしながら「えんさん、あれ何?」と聞き「マクドやな」と返させる言葉狩りによる大阪イジリをしていた。「群馬県民は蛮族」「群馬は成人の儀式がある」「グンマーw」などという迫害を受けてきたにも関わらず、俺は大阪から来た人間をイジっている。こうしてイジメは生まれる…

しかし、「マックシェイク」は「マックシェイク」と呼ぶらしくて俺は腑に落ちていない。夜に目が覚め、何故マクドシェイクじゃないんだ…と頭を抱える日々がこれから永遠に続くだろう。

 

 ウェアハウス近辺につくと、綺麗なビルの真横にサビで薄汚れたきったねえウェアハウスがあり、川崎に亜空間としてアクセントを加えていた。オトコノコなら誰しもが一度は興味を抱く九龍城がそこにはあった。内装はスラム街。九龍城をこの目で見たことがないが雰囲気はバツグンに良く、世界観の表現がディズニーと遜色ない。

ただ、ここゲーセンなんだよね。この世界観で平気な顔してゲームしてる常連客はいったいなんなんだよ。怖いわ。

 

 ウェアハウスは程々に、他の場所でビリヤードをすることに。 しかし、全員が初心者で、ハンゲームでならやったという経験者気取りの強がり以外に経験の差はない。いざやってみるとビリヤードという名の球突き遊び。白い球を小突いて数字の書いてある球に当てるゲーム。あわよくば台に空いている穴に球を落とす。爽快感が死んだ知育玩具。

ハンゲームなら入ってた」などというたわごとをブツブツを繰り返しながら、あまりにも不毛だったためビリヤードは3回くらいで終了。

 

 えんさんに他に何かやりたいことはないかと聞くと「ボウリングがやりたい」と言うのでボウリングをやることに。ボウリング。大阪にはボウリングがないのか、ボウリングが規制されているのか、大阪への興味は尽きなかった。 

俺はボウリングが下手糞で、ボウリングが得意な母親から腹違いの子供なのではと疑われたことがある過去を持つ男。ガーターに球が吸い寄せられる呪縛にとらわれていると疑うほどガーターに行く。多分プロボウラーが見たらシバき倒されるほどの投げ方をしているのだろう。

画面に表示されるスコアが常に非情な真実を告げていて、えんさんのスコアがグングン伸びていく中(プロボウラーか?)、俺のスコアにはGという文字が並んでいる。実質、俺と上田のビリ争奪戦になっていた。

途中で隣のレーンに2人の外国人客が入ってきた。遠慮なしに俺のボールを使ってくる破天荒な奴らで、まぁ2人とも俺とボールの重さ同じだし間違えるのはしょうがないなって思ってたけど指の穴のサイズが「S」「M」「L(俺)」じゃねえか。確認しろ。彼らは1ゲームやったら帰ったんだけど、俺の「L」は片付けないで帰って行った。

わかってんじゃねえか!

 

 ボウリングを終えて居酒屋でダベりつつ、えんさんに他に何かやりたいことはないか?と聞き、さながら死刑執行前日の死刑囚のような扱いをしていた。実はアキバに行ったことがないという話から飛躍してメイドカフェに行ったことがないという話に不時着した。

最近はどこにでもメイドカフェあるからなぁみたいな感じになり、とりあえず最寄りのチェーン店っぽいメイドカフェに行くことになった。イベント前日なのにフットワークが軽い。 

 

メイドカフェに入ると、まぁメイドカフェ。ミニスカメイドに常連のおじさん達。俺は…この空気を…知っている…ウッ!コンセプトカフェ…!スゥー…ウゥッ!頭が…割れるように痛い…コンセプトカフェは孤独に効く…

 

 店内はなぜかダンガンロンパの1話を延々と流し続けていて気が狂いそうだった。初回だという事でメニューと注意事項を説明されると、お嬢様セットとかいう女性限定で「”スイーツ”にメイド服に着替える権利とメイド服でチェキを撮れる権利が付いてくる」空気がヒリつくパンチが効いたメニューがあることが判明した。誰がこんなイカれたメニューを頼むのかと思っていたら上田が着物が暑すぎて着替えたいという大義名分を振りかざしお嬢様セットを頼んでいた。えんさんも流れで「着るしかないっしょw」みたいになってお嬢様セットを頼むハメになった。

 

俺も「着るしかないっしょw」みたいにそそのかしておいてなんだが、実は心が冷えついていた。なぜなら俺もまたコンセプトカフェに通っていた人間だからだ。経緯はどうあれ、常連客からしたら異性連れでのコンセプトカフェ入店はレンタルビデオ屋のアダルトコーナーに複数人で入り込んでくる行為に近い。レンタルビデオ屋のアダルトコーナーは言わずと知れた紳士の社交場、俗世から離れた精神と時の間。失われつつある侍としての魂や趣がそこには存在している。ひと時の伴侶選びに真剣に取り組む姿はどこか職人のようにも見える。(同じようなこと前にも書いた気がする)

そこに複数人でワイワイとAVを物色しようものなら、死刑を求刑されることもあるだろう。

俺はそれと似たようなことをしている。いっそ俺もメイド服を着させてくれ!と思いながら、メイド服に着替えた2人を見ていた。

用意されていたメイド服は、店内でメイドが着ているちょっとスケベな物とは程遠く、明らかにチャチい。メイド服から溢れ出るドンキ感と表情の硬い2人を見て接客慣れしていないメイドっぽかったので「大分県メイドカフェの店員」と揶揄し、小馬鹿にしていた。

 

 「文化祭の出し物でメイド喫茶やってます」みたいな感じの空気が漂うテーブルでしばらく過ごしていると、お嬢様セットのチェキを撮る時間がやってきた。俺はメイド服の2人だけで撮るものだと思い、完全に高みの見物をしようとしていたが「お前も撮るんだよ」という”圧”によって3人でチェキを撮ることになった。

おわかりいただけただろうか、メイドカフェで本職のメイドとはチェキを撮らずにメイド服を着た身内とチェキを撮るという怪奇現象が起こっていることに。

俺が真ん中に立ち、2人が両サイドに立つという地獄サンドイッチをブチかまされ、ファラオのように腕を前で交差させ手でハートを作る。心に虚無を芽生えさせながらチェキを撮り終えると、なぜか一旦本職のメイドがチェキにラクガキをしてくれてから我々の手元にチェキがやってきた。

 

チェキを見ると、金剛力士像のようなメイドに挟まれたファラオが居た。

 

全員、表情筋が死亡している。

チェキにAEDを使ってくれ。死んでるんです。

 

宴もたけなわ、メイドカフェに居たらほどよい時間になり解散することになった。

 

いろいろあったが、楽しい一日を過ごすことができた。

えんさん、今度東京に来るときはぜってぇウンコの事ババって呼んでくれよな!