先月の話になるが、後輩たちに誕生日を祝ってもらった。
その際に「幼児退行セット」と称してプレゼントを貰ったのだが、歳を取ったお祝いで何故かふりだしに戻るアイテムを貰うというバグが発生する。
「小倉唯の写真集、哺乳瓶、大人の粉ミルク」と3つのアイテムから導き出される答えは小倉唯をママと見立てて哺乳瓶で粉ミルクを飲めということだろう。
しかし、待って欲しい。
小倉唯のファンではない。
上坂すみれの写真集を送ってきたり、二度にわたって竹達彩奈の写真集を送りつけてくるオタクもいるが、どちらもファンではない。普段から声優に対して声を大にしてブヒっている面影もないのに何故こうも声優の写真集を送りつけられるのか疑問である。
ついでにいえば、竹達彩奈の写真集を送りつけてくるオタクに関しては俺に安産祈願のお守りを渡してきたりするサイコパスなので法で裁いて欲しい。
小倉唯の写真集はともかく哺乳瓶ならびに大人の粉ミルク。特に哺乳瓶に関しては今後所持しなければならないという事実が一番キツいのだが、本体に貼り付けてある「おっぱいを飲むカタチ」というシールがこざかしい上に、シールの写真のせいでキャップの中に隠れている乳首が露呈されてんじゃんこの変態哺乳瓶が。
誕生日を祝ってもらってからしばらく経過したとある日、
帰宅後に洗濯するために着ていたものを脱ぎ捨ててパンツ一丁になっていた際にふと、幼児退行セットの入った紙袋が目に入る。
計らずして良質なテイスティングを行うための態勢が整っている…
千載一遇の幼児退行チャンスを無駄にするわけにはいかない。
そう思いミルクを作成する運びとなる。
水で粉ミルクを溶かして振るときたねえ米のとぎ汁みたいな色の汁になって見た目が最悪。
ぬるい水で作ったプロテインは不味いという話を聞いたことがあるので、作成後に少し冷蔵庫に入れて放置。その間もパンツ一丁だった。
粉ミルクが冷えたところでいよいよテイスティングとなる。全くといって気持ちが高揚しない。
なぜなら…変態行為だから…
写真集を手に取りページをめくると小倉唯が脳になだれ込んでくる。ほどよいページを開いたまま哺乳瓶を口にすると、冷えた粉ミルクが口にチョビチョビと入ってくる。
哺乳瓶ってこんなにも飲みにくいんだなという気持ちと、年下の声優を見ながら哺乳瓶で飲む粉ミルクはこんなにも不味いんだなという情けない気持ちになる。
チョビチョビと哺乳瓶の乳首を吸うようにしないと内容物が出てこないので、俺はパンツ一丁で写真集を見ながらチョビチョビと哺乳瓶の乳首を吸っている。
味もヨーグルト風味とのことで、酸味がある。
母乳って…こうなの?
牛の母乳なら普段から飲んでるけど人間の母乳に関しては物心ついてから飲んでいない。そもそも物心ついてから飲んでいる奴は歯止めが効かないくらい変態。
「絶対牛のほうが母乳美味いわ。俺もう牛の子でいいよ。」など粉ミルクを母乳に置き換えるほど脳が混乱している状態で、粉ミルクの味について考えることで自身の行っている行為に対する感覚を麻痺させていた。
しかし、半分ほど飲み終えたところで小倉唯は俺の母親だったということに気が付く。
この人から産まれてきたんだという架空の記憶によって脳を誤魔化すことでしか自分の心を守ることができなかった。
小倉唯の息子である俺はここで初めて産声を上げたのだ。
殺してくれ…
*1:栄養機能食品は心の疾病に対して機能するのだろうか。